あらすじ
主人公の《まい》は中学1年生で不登校になってしまう。喘息の休養も兼ねて、《西の魔女》こと祖母の家でしばらく二人暮らしをすることになった。ある晩、まいは「死んでしまうと感情を失う気がして怖い」と打ち明ける。祖母は「人には体と魂があり、死んでも魂はここにある、私がいつか証明しよう」と約束する。
時は流れ、「西の魔女が死んだ」とママから報告を受け、まいは2年ぶりに祖母の家へ向かう。
この本の好きなところ
おばあちゃんの住む家には庭があり、たくさんの花が咲く。まいは、ワイルドストロベリーを摘んでジャムをつくったり、足もみして洗ったシーツをラベンダー畑の上に干して香りを移したりする。何にも追われない穏やかに流れる時間がとても贅沢で、自然豊かな生活への漠然としたあこがれが広がっていく。
それから、おばあちゃんは絶対にまいのことを否定しない。持参したマグカップに「いい趣味だ」と言い、色鉛筆で彩ったジャムのラベルを見て『感性が豊かな私の自慢の孫』とつぶやく。自分のことを無条件に肯定してくれる存在が近くにいるってすごくありがたい。
でも、おばあちゃんは褒めるだけではない。まいは近所に住むゲンジさんを嫌っていた。言葉が乱暴だったり、接し方が雑だったりするのを見て悪い人だと思い込んでいるからだ。勝手な思い込みで他人を判断するまいを毅然と叱るのだ。このバランス感覚は、きっと、年齢の離れた孫のまいとも対等に接しているからこそできることなのだと思う。
魔女になる必須条件とは
おばあちゃんとの田舎暮らしの中でまいは魔女になるための修行を受ける。魔女といっても、呪文を唱えたり、大鍋で怪しい何かを煮詰めたりはしない。おばあちゃん曰く、魔女の必須条件は「何事も自分で決めてやり遂げること」だという。
3キロ痩せようと決意してもつい食べ過ぎる。資格を取るために勉強すると決めても参考書だけ買って開かないまま。お風呂上がりにやろうと思っていた柔軟運動が続かない。体が固いと代謝が悪くなるらしいから鍛えたいのだけど何日か経つとやらなくなってしまう。
その繰り返しで「やっぱり私ってだめね」と自信をなくすことが少なくない。
やり遂げたその先に
振り返るとひとつだけ、自分で決めて続けられていることがある。それは、本を読むことだ。
社会人になってから積極的に本を読もうと決めた。通勤中に同じ電車に乗っている大人たちを観察すると、やはりスマホをいじっている人が一番多い。もしくは下を向いて目をつぶっているか。そんな中、7人に1人くらい本を読んでいる大人がいる。一番かっこよく見えたので、電車内ではできるだけ本を読んでいようと決めた。
小学生のころ、1学期のうちに学校の図書カードが裏まで埋まる友だちのことは、大食いファイター的な自分とはちょっと違う世界の人のように思っていた。夏休みの読書感想文はできるだけ文字が大きい本、もしくは厚みがない本を選ぶような体たらくぶり。
だから、はじめのうちは月に1冊でも読めたらいいほうだった。「最後まであきらめずに頑張りました」レベルからのスタート。それでも読んでいくうちにだんだんと数をこなせるようになってくる。自分に合う本も分かってくるような気がした。
あるとき「月に4冊、年48冊読むこと」を目標にした。小説、自己啓発、エッセイなどジャンルは問わない。読んだ本はツイッターに載せて記録をとっていく。結果は36冊。達成できなかったことが悔しかった。だから、翌年も同じ目標で読書を続けて52冊を読むことができた。
今でも本を読むことは続けている。ペースとしては月に2,3冊といったところか。自分の意志でやり遂げると自信がつく。あのとき電車で本を読んでいたかっこいい大人たち、ありがとう。
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