本の内容
小学生のことの体験や感想をつづったエッセイ集で、春夏秋冬の季節ごとにエピソードがまとめられている。
友だちと公園で遊んだ日のこと、算数の時間なのに先生が「ドッヂボールをしよう」と言い出したことなど、ほっこりエピソードが並んでいる。さし絵には子どもならではの視点を切り取ったなんでもない場面がやわらかいタッチで描かれていてかわいい。
子どものころはなんてことなかった、でもいま思えば特別だった時間がいっぱい詰まっている。
この本の好きなところ
着眼点が大げさじゃないところがいい。もちろん、エピソードの中には入学式のこと、クリスマスの日のことなど、ちょっとしたイベントでの話題もある。でも、目のつけどころが小さくて狭い。
入学式は、洋服がちょっと大人びているから周りに中学生だと間違われないか心配する話で、クリスマスではケーキの上の砂糖でできたサンタさんよりチョコのおうちの方が小さいから、どうやってサンタは家に入るのか心配する話なのだ。
新しい環境でのドキドキとか、年に一度のイベントでのワクワクとか大げさじゃない着眼点がとてもいい。この狭さが作者らしさなんだろうなと。
名推理?
読み終わった後に自分が子どもだったころのなんでもない記憶がふわっとよみがえってきた。
実家にあった3段のひな人形。3月になると仏壇がある部屋に飾ってもらっていた。それには、ひな祭りの曲が流れる絵馬のような形をしたオルゴールがついている。周りは木でできていて
「________ちゃん」
こんな感じで、すみっこに名前を書くスペースがある。「ちゃん」はすでに印刷してあった。お母さんが私の名前を書いてくれたいたのだが、
「 やっぴ_____ちゃん」
明らかに寄せて書いてあった。「ちゃん」の横にまだ字が書けるスペースが残っている。私ならもっとバランスよく真ん中に書くのに、どうして端っこに書いたのだろうと、一生懸命考えた。
ひな祭りは女の子の行事だ。家にいる女の人は、お母さんとおばあちゃんと私の3人。お母さんとおばあちゃんは名前の最後に「子」がつく共通点があった。私にはつかない。
ひらめいた。大人になったら女の人は名前が変わるんだ。私もふたりと同じように大人になったら今の名前の後に「子」がつくから、それを書くために取っておいた余白だと推理した。
お母さんとおばあちゃんの名前から「子」を取ってみた。こんな名前の人、いそういそう。確信した。将来、やっぴのあとに「子」をつけるための空白に違いない!自分なりの考えを発見してすっきりした。
翌年、妹が生まれた。
「やっぴ・やっぴの妹 ちゃん」
余白はきれいに埋まっていた。
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